ジュウニブンノイチ_Episode 8/12




時は経つ。
と、実感することは、生きている間に数回しかないように思う。




「高校のころ、一度だけ街中で見た記憶がある」
「教室じゃしゃべらなかったものね」
「中学も一緒だったんだっけ?」
「中、高、大と一緒よ。実は」
「あっれー、中学…中学…同じクラスだたっけ?」
「中学でだけね。」
「そっか、じゃあ忘れてても仕方ない」
「失礼な人」



大学生になった。
高校時代をとにかく忘れたかった。
友達はいなくなった。
俺は、得難い一人がいればそれでいいと思っていた。
そのひとりが生活から消えた後のことなんて考えたこともなかった。
大学は、おばあさまが望んだ道で、
「生き抜くためにできる限りの知識は身につけなさい。」
の言葉通りならねばならないと思っていた。
でも知識があるからと言って賢くなれるわけではないことも分かっていた。



「俺、そういうところ馬鹿なんだと思う」
「そういうところ?」
「なんだろう、全体的に足りてないんだ。これでいい、っていうラインがいつまでも遠い」
「子どもなんじゃないの」

カチン。

「子どもかな」
「余白がたくさんあるってこと」
「余白?」
「 未来があるってこと」






夕鶴に出会った、というか、
付き合いだしたのは大学2 年の終わり。
俺は全く彼女のことを知らなかったけれど、
話していると、なんでここまで、把握されているんだろうと不思議になる。

「ねえ、俺のストーカーとかしてた?」
「するようにみえる?」

眼鏡の奥でにっこりした目とかちあうけれど、いまいち何を考えているのかわからない。

「いや、それはそれで嬉しいというか」
「被害者になりたい願望?」
「ちがうよ、愛されたい願望」
「やっぱり子ども!」
「未来がある?」
「ええ、未来が。」



(2010.12 初出)